Butterfly

誰でもみんな青虫の頃は、カゴの隙間から外の世界を自由に行き来する。

カゴの中は、食べ物がたくさんあり、安心して眠れる場所。

カゴの外は、見たこともない景色が広がる自由な場所。

青虫たちは、カゴの外の世界で空をひらひら舞っている蝶に憧れる。

ぼくたちも、早く成長してあんな風に空を飛んでみたい。

やがて、青虫たちは安全なカゴの中でさなぎになり、立派な蝶になる。

そして初めて気づく。

蝶になって大きな羽をもったことでカゴの隙間から外に出られなくなったことに。

初めは外の世界が忘れられなくて、外に出ることを夢見て過ごすが、次第に外を見ることすらしなくなる。

私は、外の世界をまだ夢見ていた。

あるとき、いつものように外を眺めていたら、一人の紳士が近づいてきてカゴの扉の鍵をそっと開けたことに気がついた。

私はその扉をおそるおそる押してみると、扉がゆっくりと開いた。

戸惑っている私を見て、紳士はそっと私を指の先にのせると、空高く腕を伸ばした。

私は一生懸命に羽ばたいた。

ずっと夢見た外の世界で、かつて憧れた蝶たちのように空を飛んでいる。

カゴの方を振り返ってみると、扉が開いているのに他の蝶たちは外へ出ようとしない。

ずっとカゴの中にいたことで外の世界が信じられなくなり、罠だと思っている蝶や、扉が開いていることにさえ気づいていない蝶もいる。

私は空を自由に舞い、海へ波の音を聞きに行き、花から花へと飛び回った。

そんなある日、だんだんと長い時間を飛べなくなってきていたことで生き物の定めを悟った。

弱々しいながらも凛として飛び続けていると、あの時の紳士を見つけた。

私は、心のどこかでまた会えることをずっと願っていたような、なぜかホッとした感覚と同時に力が抜けて、その紳士の肩にゆらゆらと舞い落ちた。

ふと辺りを見回すと、そこには花畑が広がっていた。

紳士は私をある花の上にのせてくれた。

その花は、紳士のお気に入りの花。

私は、可憐に咲くその花の姿にただただ見とれた。

やがて私は心地よくてやさしい香りに包まれながらそっと目を閉じる。

真っ白なクチナシの花弁の上で。

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