「ほしのぎんか」の物語に出てきた主人公は、まさにそんな女の子でした。
その女の子は、一見すると不幸の真っ只中にいます。
貧しくて、ひとりぼっちで、食べるものは一切れのパンだけ。
住んでいる家も、ボロボロで今にも崩れそうな状態です。
しかし、女の子は自分の境遇に対して、誰かのせいにするような愚痴や不満を一切言いません。
「さみしいけれど、元気を出しましょう。」と、今の状況を受け入れて、自分に対して前向きな声かけをします。
そんな中、住んでいたボロボロの古い家は、ついに崩れ落ちてしまいます。
こんなことが現実に起きたら、絶望するところです。
それでも、その女の子は感情的になったり文句を言ったりしません。
「この家に住むのはもう無理ね。行くあてはないけれど、旅に出ましょう。」と、現状をただ受けれて、次に何をすればいいかを判断します。
一切れしかないパンを大事にかかえて、前に向かって歩き始めます。
その後、女の子は旅の途中で、何人もの困っている人に遭遇しては、自分の持っているものをどんどん分け与えていきます。
まず一人目。お腹をすかせた旅人に出会います。
女の子は、迷わず一切れしかない大事なパンを旅人に手渡します。
そして、優しく微笑んでから、また先へと歩き始めます。
森の奥へと進むたびに、困っている子供が次々と現れます。
帽子を小鳥にとられて泣いている子供、上着をお父さんにお酒と交換されて落ち込んでいる子供、これから冬が来るのに長袖のシャツがなくて不満を言っている子供。
そして、自分のスカートが赤ちゃんのおくるみになってしまって腹を立てている子供。
この子は「赤ちゃんなんて大嫌い!」と怒っていました。
しかし、女の子は決して一緒になって悪口を言ったり非難をしません。
「まぁ、それは困ったわね。」と、その子の気持ちを認めて共感し、自分のスカートを譲ります。
こうして、女の子は自分の帽子、上着、スカート、シャツを子供たちに次から次へとあげていってしまいます。
そして、その度に優しく微笑んでから先へと進むのです。
物語なので、極端で突飛な部分はもちろんありますし、女の子の行き過ぎた行動には賛否両論あります。
しかし、学ぶところも多くありました。
- どんな境遇でも、愚痴や不満を言わずに、ただ現状を受けれいて、その上で何をするべきかを淡々と判断して行動する
- 生きとし生けるものに対する慈悲の心
- 決して悪口や否定する言葉は言わず、気持ちを認めて共感する
- 微笑みを忘れずに、いつも前を向いている
この物語では、女の子のもとに 空から「星の銀貨」が降ってくるのですが、現実の世界に置き換えてみると、「誰かからの応援」と捉えることもできます。
例えば「あしながおじさん」や「タイガーマスク」、今の時代なら「クラウドファンディング」など、様々な方法でサポートすることができるので、その応援自体がこの物語の中では「銀貨」の姿で女の子の目の前に現れたのかなと感じました。
「星の銀貨( Die Sterntaler )」のお話は、グリム童話に収録されている作品です。
語る人によって、いろんなアレンジがありますが、私はこちらの動画のストーリー展開や イラスト、セリフを気に入っています。
この記事もこちらの 絵本読み聞かせ動画『ほしのぎんか』を参考にしています。
特に、温かみのある ふんわりとしたイラストが好きです。
旅の途中にリスやうさぎが出てくるのですが、この女の子の優しい気持ちに惹かれたのか、うさぎはついてきます。
北風が吹く中、自分の服を子供たちにあげてしまって、寒さに震えている女の子の心をあたためようとしたのでしょうか。
最後は、新しい家で女の子がホワイトシチューを作りながら、うさぎと一緒に過ごしているイラストで終わります。
もう、ひとりぼっちではありません。
そして、この動画に出てくるイラストの中で、初めて女の子の笑顔が描かれていることにホッとします。