人が何かを感じるとき、その感覚は本人にしか分かりません。
本人すら気づいていないこともあります。
その、“ 言葉には言い表せないような感覚 ” に気づいて、あるいは発見して、それを見事に言葉によって描写してくれるのが作家です。
“ 作家が感じた感覚 ” は、「言葉という姿」になって本の中に生まれていきます。
ただ、その言葉によって綴られた文章を読んだとしても、私たちはその作家が感じた感覚と、まったく同じ感覚を得ることはできません。
なぜなら、その言葉によって頭の中に連想するものが、その作家とまったく同じではないからです。
その言葉を通じて再現されるイメージは、それまで生きてきた中での各個人の知識や経験の影響を受けるので、まったく同じということはあり得ないのです。
しかし、その文章を読むことで作家が表現したかった感覚に近づくことができます。
あるいは、その文章をその人自身の捉え方で自由に連想して無限に世界を作り上げることもできます。
作家が生み出す言葉は、私たちが気づかない繊細な感覚から生まれたものだったり、私たちの想像を遥かに超える異次元から生まれたものだったりします。
それは、まるで私たちが “ 普段は感じることのないような感覚 ” に出会える「未知の世界への懸け橋」のように思えます。