言葉の響きの美しさを堪能できる『ことばの生まれる景色』

知らなかった世界や、知らなかった言葉、知らなかった概念が人生の中に登場することによって、自分の世界の中にそれまでなかった色彩が広がってゆきます。

未知の世界を知ることで、自分の世界はどんどん鮮やかに彩られていきます。

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言葉の響きの美しさを堪能できる

音声による言葉は、声質や抑揚などで雰囲気がつくられます。

活字の言葉は、字面や行間などで雰囲気がつくられます。

特に日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字と様々な文字を組み合わせることができるので、文章を通していろんな雰囲気をつくることができます。

その作家が、ある言葉を選んで、あるいは作って、組み合わせて、描写した文章の世界は、言葉によるアートのようです。

なので、文章には、その作家にしか生み出せないような個性があり、独特の世界観があります。

本書「ことばの生まれる景色 辻山良雄/文 nakaban/絵」は、著者にとっての大切な本が集められています。

その作家の文章の個性や特徴、著者がその本と出会ったいきさつや思い入れ、その本にまつわる話などとともに紹介されていくので、著者の人生の中で「その本の存在」がどのようなものなのかが伝わってきます。

そして、その本から抜粋された文章を通じて、心惹かれる言葉や美しい描写に出会うので、言葉の魅力を再認識できます。

本書に登場する作家の文章を読んでいると、今まで見てきたはずの景色なのに、自分の中では認識されていなかった世界がたくさんあることを気づかされます。

言葉では言い表せないような世界が、「言葉」となって作家から生み出されたとき、私たちはその未知の世界の「存在を知る」ことができます。

そんな未知の世界に招待してくれる言葉が本書にはたくさん詰まっています。

自分の感覚にしっくりくるような文章を生み出す作家との出会いもあるかもしれません。

本書で紹介されていた本の中で、私が気に入った一節は、

枯れたチューリップを

袋に入れて

あたらしい花を活ける

マーガレット

カーネーション

ラナンキュラス

アネモネ

息をする

一週間前に買った

窓際のクロッカスも

一輪 咲いた

出典:『よいひかり』三角みづ紀

そのあとに綴られた著者の文章にも惹かれました。

詩人のことばにより活けられた花。続けて花の名前がゆっくりと声に出され、何もない空間のなかに咲きはじめる。声にされたことばだけで構築された世界は最初頼りなくも感じられたが、その時間に馴染んでくるに従い、生まれたばかりの世界とかすかに触れ合った感触が、身体じゅうを満たしはじめた・・・・・・。

出典:『ことばの生まれる景色』辻山良雄

この美しい言葉の響きによってつくりだされた世界観を堪能したとき、言葉は未知の世界との懸け橋だなと改めて感じました。

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ブックデザインのこだわり

本は、装丁の鑑賞も楽しみのひとつです。

この本は、表紙はターコイズブルーのような深みのある水色で、ハードカバーは濃い青色となっており、私はそれらの色合いが好きです。

3つの章に分けられているのでその仕切りのページとして、左上に各章の数字が印刷されて、表紙と同じ深みのある水色一色に塗られたページがあります。

その仕切りのページが現れると、一面が水色なので、まるで袋から取り出したばかりのまっさらな折り紙に触れているかのような、気が引き締まる感覚になり気持ちがリセットされます。

そして、仕切りの水色のページが左側で、右側は白色のページなので、真ん中が境目となり左右に分かれている水色と白色のコントラストも素敵です。

栞の紐も、もちろん綺麗な水色です。

さらに、オールカラーなので、nakabanさんの絵の迫り来るような印象的な色のパワーをしっかり感じ取れるとても満足感のある一冊です。

「本の一節」と「絵」が織りなすアート作品

一冊紹介するごとに、その本の中から抜き出された一節と、nakabanさんの絵が組み合わされており、アート作品を眺めているような感覚にもなります。

 

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