少しセンチメンタルな気分の夜は、みなさんどうされていますか?
私はホットミルクが飲みたくなります。
まずは、雰囲気づくりから。
部屋の明かりを間接照明に切り替えます。
オレンジ色の、淡い 柔らかな光の空間をつくるためです。
今夜のBGMは、ドビュッシー作曲の『月の光』。
準備ができたら、人肌に温めたホットミルクにゆっくりと口をつけます。
なんでしょう、このホッとする心地よさ。
ミルクのまろやかな口あたりが、そうさせるのでしょうか?
温かいカップを両手でそっと包んで、そのぬくもりにも癒されます。
耳の方は、すっかりドビュッシーに夢中です。
倍音の響きと、ホットミルクとの相乗効果で、なんとも言えない安心感に包まれます。
月夜の森の中を散歩するような、幻想的でゆったりとしたリズムに包まれながら、ホッと、ミルクが体に染み渡ります。
前の音と、次の音とが重なり合う様子は、色とりどりのシフォンベールが重なり合っていくような美しさ。
私がこの曲で楽しみにしているポイントがあります。
それは、“ 音の余韻 ” です。
鳴った一つの音が、空間に広がってから消えゆくまでの “ 音の余韻 ” 。
もちろん、美しい旋律も好きですが、後にじんわりと残り響く “ 音の残像 ” の方が、もっと好き。
何もない空間に、音が生まれて、空間を華やかに彩りながら、音の残像となって、かすかに残り響きながら、また夜の静寂に溶け込んで消えていく。
まるで、音の波に漂っているようなイメージです。
寄せては返すさざ波のように、現れては消えてゆく音の波のリズムに、ちょっぴり疲れている今の自分の「感覚」を、全部預けてしまいます。
重なり合っては 分散して、広がって、消えてゆく “ 音のさざ波 ” に、小石の角が取れてまるくなっていくように、「預けた感覚」も優しく柔らかくなってゆきます。
不安だったり憂鬱な気分のときは、ゆっくりとホットミルクを飲みながら、神秘的な音の波にたゆたううちに、不思議と心も癒されています。