この映画の始まりは、絵の中の2匹のうさぎが動き出し、雪の降り積もったコーギコテージにぴょんぴょんとやってくるところからです。
流れる音楽も素敵です。
しんしんと降る雪にぴったりの透き通った声とピアノの響きによって、別世界に迷い込んだような感覚とともに物語がスタートします。
世の中では、悲惨なニュースや国同士の争い、過激な言論、欲望を駆り立てるような騒がしい出来事で溢れかえっていますが、ターシャさんの住む世界は、まるで時が止まっているかのように、世間の喧騒とは無縁の静かな空間に包まれています。
この美しい世界を謳歌しないなんて馬鹿げているわ
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
聞こえてくるのは、鶏の鳴き声、小鳥のさえずり、虫の音、木の葉の擦れ合う音、枯葉が落ちて積もる音、暖炉の薪が弾ける音。
そこにあるのは「音のある静寂」です。
この家では時間の進み方が違うの
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
その山奥の敷地に広がる風景は、絵本の中の世界がそのまま姿をあらわしたような、草花や鳥や動物たちが共に暮らすターシャさんの夢の国です。
ターシャさんは、まさに、自分のお気に入りのものに囲まれた世界に生きているのです。
美しい庭は喜びを与えてくれるわ
満天の星と同じよ
草原に咲き乱れる白いデイジーを想像してみて
無数のデイジーが光をあびて輝くの
まさに夜空の星のように
もう他に何もいらないと思うわ
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
この夢の国では、繰り返しのつまらない日々なんてなく、庭に出る度に目を輝かせて、初めて見るかのような新鮮な驚きと感動を五感で味わいます。
子供たちと私は「探検」と称して 毎朝寝間着のまま外に出て「昨日とは違う何か」を探して回ったの
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
何百もの球根を植えて花が咲くのを待つ時間、動物たちとのふれ合い、四季折々の木や草花の観察、午後のティータイムのくつろぎ、家の中を素敵に演出するロウソク作りなど、一つ一つが単なる日常ではなくおとぎ話のようなワクワクする出来事なのです。
近頃の人は辛抱することを嫌うけど 庭造りにも人生にも絶対必要
かわいい花を夢見て待てば ワクワクするでしょう?
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
すべての瞬間を楽しみなさい 五感のすべてで命を感じなさい
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
そして、スティルウォーター教と称するターシャさんの信念は、
静かな水のように穏やかであること
水鏡に映し自分を知ること
周りに流されずに自分の速さで進むこと
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
時代に流されない生き方は、ターシャさんが惹かれる小さな動物たちにも相通ずるものです。
彼らは必要なすべてが身の回りにあると知っているから満ち足りている
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
ターシャさんは、なぜこのような世界を築き上げることができたのでしょうか。
私たちは夢と同じものでできている
シェイクスピア
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
厳しいときこそ 目の前にある喜びを 自分自身で見いだす努力をしよう
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
私は時々腰をおろして ゆっくり味わうの
花や夕焼けや雲 自然のアリアを
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
そして、「選ぶことの大切さ」を一番に考えて、すべての選択を真剣に行ってきたのです。
家の仕事にしても趣味にしても
何をして何をしないか
誰と会って誰と会わないか
人生は小さな選択の積み重ねでできている
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
私たちが選ぶ一つ一つが、自分の理想とする世界を築くピースとなっています。
いつも手を動かすことを楽しみ
自ら創り出したものに幸せを与えられ
そうして積み重ねた人生は充実したものでした
出典:ターシャ・テューダー 静かな水の物語
この映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』には、絵の中のコーギ犬がアニメーションとなって絵の中をトコトコと歩き回って散策するシーンがあります。
私のお気に入りのシーンの一つです。
この映画を見ていると、知らないうちに自然と笑みが浮かびます。
そして、ターシャさんの優しくてかわいらしい夢の世界に、すっかり夢中となってしまいました。