私にとって、『紙の本』と『電子書籍』の一番の違いは、「五感で得られる刺激」です。
たしかに、電子書籍は場所もとらないし、文字の大きさを変更できたり、検索機能があるなど、良い面がたくさんあるので、私も利用したりします。
とくに、読み上げ機能(オーディオブック)には感動します。
読みたいけど読む時間がないときなんかに、家事の手を止めずに「本を聞ける」からです。
また、紙の本の場合は、本棚など保管場所が必要な上に、埃をはらったりもしないといけないし、持ち運べるのはせいぜい2冊です。
電子書籍ならば、何万冊と持ち運べます。
だけど、 『紙の本』 には紙の本でしか得られない「体感覚」があります。
まさに “ 本を味わう ” といった感じです。
とりわけ、私は「ハードカバーの本」が好きです。
なんといっても重厚感。
文章どうしの間隔のゆとり、余白の絶妙なバランス。
本を側面から見たときの、ゆるやかなカーブの曲線美。
“ まさに「本」 ” という、形そのものが、素敵な何かを秘めているような予感を感じさせるからです。
この中に、
「どんな知識が詰まっているんだろう?」
「いったいどんな楽しい世界が広がっているんだろう?」
と、まだ見ぬ “ 未知の世界への入り口 ” が、そこにあるかのように、好奇心を駆り立てるのです。
いざ、表紙を開くと、耳で感じる読書が始まります。
ページをペラっとめくる音。
紙と指が、サーッと擦れる音。
私は、最初のページをめくる音を聞いて、物語の冒頭の一文が目に入る瞬間が、「わぁ、始まった!」と一番高揚します。
それは、映画館で、長い予告が終わったあと灯りがスッと消えて、一瞬暗くなってから、本編の映像の光が目に飛び込んでくる瞬間の、あのワクワクする感覚にも似ています。
そして、肌で感じるのは、紙の質感。
辞書のように柔らかく繊細でツルツルの質感もあれば、図鑑のように硬くがっしりした光沢のある質感もあります。
鼻で感じる読書も捨てがたいです。
私は、匂いフェチなのか、デパートの包装紙の匂いや、本屋さんや図書館に入ったときの匂い、新しい本の匂いがたまりません。
図書館で借りた本の、少し古びた匂いも大好きです。
そして、分厚い本を読み終わったときに、パタンと閉じる音を聞く達成感。
このような、手触り、匂い、重量感など、「本ごとに異なる五感の刺激」は、脳を活性化するので記憶にも残りやすいといわれています。
とすれば、年齢を重ねるほどに、実際に本を手に取って、五感で味わいながら読む方が、脳の健康にも良いのかなという気もしています。
『電子書籍』 には、電子書籍にしかないメリットがあり、 『紙の本』 には紙の本にしかないメリットがあります。
ノウハウや知識を得たり、ストーリー自体を楽しみたい場合などは、電子書籍。
読書そのものから得られる「味わい」「あたたかみ」などの感触も楽しみたいときは、紙の本。
『電子書籍』も『紙の本』も目的ごとに両方を使い分けながら、読書タイムを満喫していきたいです。
出版コストの面からも、電子書籍の方がこれからの時代には向いているのかもしれませんが、やはり、慣れ親しんだ紙の本がだんだんと減っていっていくことに少しさみしさを覚えてしまう今日この頃です。