人をごまかすような人間でも、相手に心から信頼され、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできないものなのだ。
『人を動かす』デール・カーネギー
「あなたは 誠実な人だと、私は信じています」
「あなたは 約束を破るような人ではないことを、私は知っています」
などを 相手から言われると、人は 不義理なことは しにくくなります。
むしろ、その期待に応えようとします。
日常生活においても、相手から 紳士淑女として対応されたら、知らず知らずのうちに、自分も紳士淑女のような振る舞いをしています。
たとえば、購入した商品に 不満があって お店に電話をかけるようなとき。
相手が 私たちを「気品があって礼儀正しい理解のあるお客様」として丁寧に扱ったとしたら、こちらも理解のある態度をとって、礼儀をわきまえた上品なお客様として振る舞います。
ところが、相手からの謝罪はあったとしても、私たちを「物分かりの悪い鬱陶しいクレーム客」として事務的に扱ったとしたら、こちらも負けじと あらゆる問題点を指摘しながら、気が済むまで戦いをやめません。
というのも、脳は、矛盾を嫌うからです。
そういう扱いを受けたなら、自然とそういう振る舞いをしようとします。
トイレの張り紙で見かける「いつも綺麗に使ってくれてありがとうございます」は、まさにその典型で、「汚さないでください」と書かれているよりも、自然と綺麗に使おうという気になります。
前者は、私たちがいつも綺麗に使っていることが前提なのに対して、後者は、最初から私たちが汚すことを前提としているからです。
相手が 自分をどのように扱っているかによって、こちら側の振る舞いは少なからず影響を受けます。
もし、相手に対してマイナスの印象を抱いていたとしても、どんな人であれ、相手のことを紳士淑女として対応した方が、ものごとはスムーズにすすみます。
自分が 気持ちの良い対応をすることで、相手も 気持ちの良い対応を返してくれるからです。
そして、絶対にしてはいけないが、ネガティブな決めつけ発言です。
「あなたってこういう人よね」「この子はこういう性格だ」などの発言をする場合、それがネガティブな内容でないかどうか、今一度よく考えてから 声に出すことが大切です。
相手にネガティブなところを直してほしいという思いで指摘したつもりでも、決して相手は直そうという気にはなりません。
相手は、余計にそう振る舞います。
特に、幼少期の子供は親の言葉で暗示にかかりやすので、このようなネガティブなイメージの決めつけ発言には要注意です。
親から自分のネガティブなイメージを植え付けられてしまうと、子供自身が「自分ってそういう性格なんだ」と思い込んでしまうので、自己肯定感も育ちません。
たとえ、そう思ったとしても、決して口にせずに、プラスの面を探して、そっちを伝えてあげることが大切です。
「あなたの挨拶は 気持ちいいわね」「あなたは 素直ね」という言葉の方が、相手も無意識にそういう振る舞いをしようとしてくれます。