『青春とは』を開くと、目に留まるのは詩の背景でポツンと立っている凛とした木。
大空の下、どこまでも広がる大地の中心で。
- 真っ白な雪原の中心でそびえる孤高の木
- どんなに空が真っ赤に染まろうが自分を見失わずに力強く立つ木
- 真っ青な空の下で、白い小さな花が広がる野原の真ん中で悠々と立つ木
- 青々とした草原の中、希望に満ち溢れて立っている木
- どこか物寂しげな木
- 冬になり、葉が落ちて枝だけになっても、また来る春を気高く待つ木
このような風景の写真が見開き2ページに1枚ずつ詩とともに、『青春とは-Youth- サムエル・ウルマン/原作詩 新井満/自由訳』には19枚掲載されています。
この『青春とは』の原詩は、サムエル・ウルマンのオリジナルの『Youth』です。
なぜ、オリジナルという文言を付け加えないといけないかというと、この『Youth』という詩は、もう一つ存在するからです。
そのもう一つの『Youth』とは、マッカーサー将軍が自分のデスクの上に掲げていた詩として「リーダーズ・ダイジェスト英語版」で紹介された『Youth』の詩です。
この雑誌で掲載された『Youth』の詩は、サムエル・ウルマンのオリジナルの詩ではなく、ところどころに、以下のようなオリジナルの詩にはない別の表現があります。
人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる。
人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる。
出典:『青春』岡田義夫/訳
この「リーダーズ・ダイジェスト英語版」の『Youth』に感銘を受けたのが岡田義夫さんで、それを翻訳した『青春』という詩が日本中に広まったのです。
『青春』は、松下電器の松下幸之助さん、伊藤忠の伊藤忠兵衛さんなど数々の企業人たちの心をも動かしました。
その後、元総理大臣の中曽根康弘さんや講談社の野間省一さんなどそうそうたるメンバーによって「青春の会」が発足するほど、この詩に感動する人が後を絶たなかったのです。
それから長い年月が経ち、今ここにサムエル・ウルマンのオリジナルの『Youth』の自由訳として一冊の本『青春とは』があります。
私の元にやってきたこの本は、私の心をつかみ、またこうして誰かの元へこの感動を届けようと私は文章を書いています。
そう思うと、この途切れることのない伝播力と不思議な巡り合わせに『Youth』には神秘的なパワーが宿っているような気がしてなりません。