日本語の「言葉」には、日本人の「感性」が 詰まっています。
今ある日本語の一つひとつは、時を経ていく中で、日本人の繊細な感覚や美意識、伝統の習慣などを 一語に結晶化したものです。
英語にできない日本の美しい言葉 吉田裕子/著
例えば、
『花曇り』
春の曇り空をさします。
青空の下で見る桜を楽しみしているからこそ、空の天気に 意識は向きます。
ところが、春は曇り空が多いので、期待や哀愁など 桜に寄せる想いがこの一語に込められて、通常の曇り空とは一線を画する『花曇り』のように素敵な言葉が生まれていくんだなと感じました。
うっすらと雲が広がった 明るい空に映える桜も また美しいので、花曇りの桜にも 趣があります。
言葉の意味を知ることで、四季ごとに移り変わる 情景の美しさに心が奪われ、その変化を敏感に感じ取って大切にしてきたという、当時の日本人の心が 伝わってきます。
漢字、ひらがな、カタカナを組み合わせることにより、細かいニュアンスの違いを表現できるという柔軟性も、日本の言葉ならではの特徴です。
そのおかげで、情緒豊かで 優美な表現も多いですし、四季の変化に富む日々を、言葉で色とりどりに染めることが できたのだと思います。
そして、日本のあいさつの言葉には、日本人の謙虚さ、思いやり、感謝の気持ちがこもっています。
それを知ることで、使う際に 単なる儀礼的なあいさつにならずに、魂が宿った美しい言葉となります。
また、そういう言葉の背景やニュアンスがあるからこそ、簡単には英語に翻訳することができないんだなとつくづく思いました。
日本語には、こんなにも繊細で絶妙に言い表せる素敵な言葉がたくさんあるのに、普段はありきたりの少ない語彙しか使っていなかったことに、もったいなさを感じずにはいられません。
『英語にできない日本の美しい言葉 吉田裕子/著』は、日本語の魅力、奥深さを再認識できる一冊でした。