私たちが、日常生活をスムーズに送れるのは、脳の「ワーキングメモリ」の能力のおかげです。
つまり、ワーキングメモリの機能が弱くなると、日常生活において、適切な「判断」や「行動」を瞬時にすることが難しくなる可能性があるのです。
ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリは、作業記憶、作動記憶とも呼ばれており、短期的に記憶をするだけの受動的な機能ではなく、脳に一時的に情報を保持して同時に処理もするので、能動的で目標志向的な脳機能といえます。
私たちが日常生活で会話や料理、読書などを行っているときに、脳では作業や動作に必要な音声情報や視覚情報を一時的に記憶しながら処理をしています。
例えば、文を読むときには文字のパターンを認知し、その単語の意味を処理します。
さらに読んだ内容を一時的に保持して情報を統合しながら読み進めていきます。
そのため、情報はいつでも活性化状態にあるので多義語の意味も文脈などから判断できるのです。
また、会話では相手の話の内容を記憶にとどめながら話をすることで質問に答えたり話を展開していくことができます。
このように、私たちの日常生活はワーキングメモリの能力によって支えられています。
ワーキングメモリは何歳からでも鍛えることができる
ワーキングメモリは加齢に伴って機能が低下していくといわれています。
しかし、何歳からでもワーキングメモリは鍛えることができます。
ワーキングメモリをしっかり使う習慣を意識的に取り入れることで脳のパフォーマンスを向上させていきましょう。
ワーキングメモリをしっかり使うには、
- 読み上げられた音声を逆唱する
- 読み上げられた数字の羅列を頭の中で足し算する
- 間違い探し
- パズル
- 絵合わせゲーム
- 瞑想(ワーキングメモリを解放する、注意力をコントロールする)
- 速音読(目は文の先を追って瞬時に記憶をしながら声に出していく)
- 外国語を学ぶ
- 楽しいことをイメージする(楽しかった記憶や望む未来をイメージする)
- 自制心を高める(報酬を先延ばしにする)
- 優先順位をつける
- 集中する(不要な情報を頭の中から排除する)
- そろばん
- 木登り、ボルダリング(体の感覚や体勢に意識を集中させてバランスをとる)
- 楽器
- 習字
- スポーツ
などが効果的だといわれています。
また、日常生活の中では、
- 料理(できあがりから逆算して効率的な手順を考えながら動く)
- 会話(相手の話の内容を頭の中でまとめたり質問を考えながら聞く)
- 暗算
- 読書(考えながら能動的に読む)
- 買い物
- 音楽を聴く(ピッチの変化を知覚する)
- 片づけ(理想の部屋をイメージして片づけの段取りを考え整理整頓をする)
- 文字を手書きする
などでも常にワーキングメモリは使われています。
ところが、だんだんと「脳を使う機会」が減っていっているような気がします。
- フードデリバリーの普及によって、買い出しに行ったり、料理をする頻度の低下
- パソコンやスマホの普及によって、手書きや暗算や電話番号の記憶をする必要性の低下
- 様々なメディアの普及による、読書離れ
などです。
適切な「判断」や「行動」を瞬時に行うためには、ワーキングメモリの働きが不可欠です。
日常生活に支障をきたさないようにするためにも、「脳を使う機会」を減らさないようにしていきたいと感じています。